日本ピュアソニック株式会社

近日のあれこれ2008年9月19日

つい最近のハイテク分野での話題から、太陽電池絡みのお話しをしたいと思います。

7月はまさに「太陽光発電に関する技術」でもちきりでした。どちらかというと、まるでキャンペーン月間であったようにも思えます。それもそのはずで、北海道洞爺湖サミットが7月7日~9日で開催されたこともあり、連日報道では地球温暖化問題に焦点を当てた低炭素化社会への取り組みや、北米で生じたサブプライム問題から、投機筋のガソリンへの先物買いによる原油価格の市場価格高騰などが相まって、一躍「太陽光発電によるエネルギー」に話題が集中したものと思われます。
 その流れの中で、国内では太陽光発電技術を集中的に研究開発を行ってきた(独)産業技術総合研究所(AIST)の太陽光発電研究センターの第4回成果報告会が7月28日、29日に行われ、続いて7月30日~7月1日に第1回目のPVJapan2008が東京ビッグサイトで開催されました。(主催者発表:入場者総数 約45,000人)

皆さんがご存知のようにシリコン系太陽電池は1980年代にアモルファスシリコンを用いて製品化がなされました。そして前出のAIST太陽光発電研究センターが2004年4月1日に発足して今日まで研究が継続されています。今日の太陽電池の光電変換効率が10%台であることのために、電力用として用いるためには化石燃料である石油を燃やして得られる火力発電の1ワット当たりのコストに比べてとても足りないことから、まだまだ不十分とされています。そこでAISTの研究課題では太陽光発電コストの低減のために、材料、デバイス、プロセスを開発することを優先して取り組んできています。その焦点となる発電コストとは、40円/キロワット時でありますが、AISTでは当面50円/キロワット時をクリヤーするための要素の抽出に全力を傾けているとのことです。しかし、この電力料金においては、家庭用で今日のコストは約2倍の高さであり、まだまだコストを下げなければならない課題がたくさんあります。さらに、このコストについては2010年までには23円/キロワット時、2020年には産業用電力で14円/キロワット時、2030年で発電原価を7円/キロワット時というとても厳しい目標が設定されているとのことです。
 このような状況下での太陽電池による電力供給ミッションは、まだまだ多くの技術課題をクリヤーしなければなりませんので、関係されている技術者は期待されている反面大きなプレッシャーがかかっているということです。
ちなみに太陽電池セルをたくさん並べたパネルのことをソーラーパネル(Solar Panel)といいますが似た言葉のソーラーシステム(Solar System)は太陽熱温水器などのことを示しますので混同しないように。そのソーラーパネルで約30㎡で3KWの発電量が得られるとのことで、一般家庭の約7割の電力がまかなわれるとのことです。これは年間で3,200KW/Hの電力に相当し、石油600リットルに換算されるとのことです。

一方で話題沸騰中の太陽電池のマーケットについては、いろいろな憶測や計画が出ていますが、本当のところ「たら、れば」と「あるべき」が交差していまして、業界筋のネタから想像するしかないでしょう。このネタによると2007年の状況ではセル市場は1兆円超えの規模に到達しているとのことであり、装置産業では2,000億円に迫るとのことです。この状況から装置産業は2030年には3兆円規模に達するだろうと観測されていますので、関係する企業はしのぎを削っているのが理解できますね。興味があるのはLCD産業との比較でありまして、LCDパネルは2007年で約9.5兆円、製造装置で約2兆円、この市場が2013年になるとパネルで約12.7兆円、製造装置で約0.6兆円と予測されています。これを同じように太陽電池産業市場だとモジュールが2007年で約1兆円、製造装置で約0.2兆円、2013年でモジュールが約12.6兆円、製造装置で約1.3兆円とのことです。つまり、LCDパネルと太陽電池モジュールの産業規模は2013年頃に同水準にまで成長しますが、装置産業は明暗を分けると言うことになります。もし現在のLCDパネル向けの製造装置メーカーが太陽電池モジュールと同じプレーヤーだったとすると、事業のクロスポイント(LCDから太陽電池へ切り替わる時期)はほぼ2011年頃になるのではということです。たぶん、このシナリオはそう単純なお話しではなく、プレーヤーそのものが入れ替わる可能性の方が高い気がするのは私だけでしょうか?




2007年(兆円) 2011年 2013年(兆円)
LCDパネル 9.5 ? 12.7
LCD製造装置 2.0 ? 0.6
太陽電池モジュール 1.0 ? 12.6
太陽電池製造装置 0.2 ? 1.3